この事例の依頼主
20代 男性
相談前の状況
インターネット上で匿名の加害者から自分を誹謗中傷する内容の投稿をされました。どのような救済を受けることができますか。
解決への流れ
インターネット上で匿名の加害者から誹謗中傷されるなどの被害を受けた場合には、自らを攻撃する情報(侵害情報)の削除を求めること(削除請求)や匿名で侵害情報を発信した者の身元を追跡し(発信者情報開示請求。プロバイダ責任制限法4条1項)、身元が判明した加害者に対して損害賠償を求める等の救済方法をとることが可能な場合があると助言しました。
1 削除請求まず、削除請求については、侵害情報を配信するインターネットウェブサイト等の管理者(サイト管理者)に対し、文書で通知し、削除を求めるとの方法によることが通常です。サイト管理者が任意に削除に応じない場合には、サイト管理者を相手取って法的措置を進めることになります。この場合、訴訟提起もあり得ますが、速効性があるのは、侵害情報の削除を求める仮処分申立てとなります。もっとも、仮処分申立ての場合、侵害情報に対する削除請求権(被保全権利) が存在することのほか、保全の必要性の存在を要します。そのため、例えば、インターネット上に侵害情報が出現してから長期間が経過した後に侵害情報の存在が発覚した場合など、侵害情報の発信から相応に時間が経過している場合には、保全の必要性が認められず訴訟提起する以外にない場合もあり注意を要します。もっとも、削除を求めて訴訟提起する場合には、任意に削除に応じなかったサイト管理者に対して損害賠償請求を併合することも考えられます。2 発信者情報開示請求発信者の追跡についても、削除請求の場合と同様、管理者に対し、裁判外での発信者情報開示を求めるとの方法があり得ますが、通信の秘密が厳重に規定されていることや、個人情報保護の視点から、開示に対する発信者の同意があればともかく、削除請求の場合ほど、サイト管理者による任意の対応には期待しにくい側面があります。そこで、裁判上発信者を追跡するには、サイト管理者に対し、侵害情報に関するIPアドレスを含む発信者情報の開示を求め(第一次請求)、次いで開示された情報から判明した経由プロバイダに対し、発信者の氏名及び住所の開示を求める(第二次請求)との、2段階の追跡過程が考えられます。第一次請求は、後述する通りアクセスログの保存義務が法定されていませんので、これが数か月から6か月程度で消失する例も多いことから、仮処分申立てによるべきです。発信者追跡のために開示を受けるべき情報は、総務省令において網羅的に規定されていますが、第二次請求を前提とする場合、同省令4号ないし7号所定の各発信者情報(アクセスログ)が重要となります。侵害情報が携帯電話端末等から発信されていた場合には、IPアドレス(4号)とタイムスタンプ(7号)のみならず、一般にユーザーIDないしユーザーエージェントと呼ばれる情報(5号、6号)の開示を受けない限り、発信者の追跡が困難ですので、これらの情報開示を受けることの失念がないよう注意する必要があります。第一次請求(仮処分決定)を経て、サイト管理者からIPアドレスを含むアクセスログの開示を受けた後は、引き続き経由プロバイダに対する本訴提起が予定されます。前提として、サイト管理者から開示を受けたIPアドレスをもって日本レジストリサービスのウェブサイト等を通じて検索すれば、経由プロバイダを確認することができます。また、アクセスログが経由プロバイダの手元でも消失しないように、第一次請求と第二次請求との間に、経由プロバイダに対し発信者情報の消去禁止を求めた仮処分申立てを介在させる場合もあります。この仮処分手続では、経由プロバイダとの間での和解成立に期待し得る場合もありますが、仮処分決定が行われる場合には、申立てから発令までに1週間以上の時間を要することが見込まれるので、申立準備を含めた時間の経過に鑑み、アクセスログの消失が懸念される場合には、まず経由プロバイダに対し、サイト管理者から開示を受けたアクセスログを消去しないよう文書で通知しておくことが有益です。