この事例の依頼主
女性
相談前の状況
慌てて相談に来られた高齢の女性は、子供のないまま亡くなった妹さんの相続に際し、兄から「相続の放棄」を求められて困っている、と話をしました。亡くなった妹さんの財産については、自宅の土地建物以外は、ほとんど把握していないということです。兄が依頼した司法書士から、突然、いくつかの書類に署名押印をしてほしいという連絡があったようですが、果たして、署名をしていいものやら、判断に苦慮しているということでした。
解決への流れ
しばしば、家を継いだ長男が全部を相続する、というような「家督相続」的な考えに出くわすことがあります。もちろん、事業承継であったり、不動産の細分化を防いだり、そうすべき必要性があって、皆さんも納得しているというのであれば、そのような処理を否定するものではありません。ただ、「自分が相続するから、ハンコを押してほしい」というような要求が、突然、来てしまうと、その不公平感は拭いがたいものがあります。そもそも「相続放棄」は、家庭裁判所に対して行う手続きですから、司法書士が求めている署名押印は「相続放棄」ではないはずです。おそらく、遺産分割に関する何らかの書類(遺産分割協議書,相続分がないことの証明書など)だと推測されます。このような書類に署名を求められたからといって、すぐに応じる必要はありません。
このケースのように、突然、「ハンコを押してほしい」「相続放棄をしてほしい」という要求を突き付けられる、というのは、私が取り扱う相続事件の中でも意外によくあるケースです。このような場合、まずは、どんな相続財産があるのか、その全容を把握するところから始める必要があります。司法書士に依頼したお兄さんは、ひょっとすると、ある程度の遺産を把握しているかもしれません。そうであれば、お兄さんに対し、把握している遺産の開示を求めるのもよいでしょう。遺産の全容を把握し、法定相続分によれば、自分はどの程度の遺産を取得できるのかを理解し、その上で、納得のいく解決を図るのがベストということになります。実は、相談に来られた高齢の女性は、以前から、お兄さんと関係がうまくいっておらず、このケースでは、弁護士が代理人として交渉することで、良い解決を図ることができました。